歯ぐきが下がってきた気がする!その2~大人の虫歯、根面う蝕に注意!!

2024年03月08日

前回、歯ぐきが下がることによって困ったことをスタッフブログに紹介しましたが、

※参照スタッフブログ 歯ぐきが下がってきた気がする!その1

https://www.aobahiro-dc.com/column/2024/4192/

今回は、その中でも歯の根元にできる虫歯(根面う蝕)についてお話したいと思います。

60歳以上の方の約半数に根面う蝕があるという報告があります。

最近は根面う蝕のことを、「大人虫歯(おとなむしば)」や「大人の虫歯」といった表現で各メディアに取り上げられていますので、見たことがあるかもしれません。

大人の虫歯の特徴として、①子供と同様に歯の間、歯の溝から起こる虫歯、②虫歯治療によって詰め物、かぶせ物をした歯との境目からできる虫歯、③根面う蝕があげられます

※参照サイト e-ヘルスネット 大人の虫歯の特徴と有病状況

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-003.html

根面う蝕はどうしてできるの?

歯ぐきが下がることを歯肉退縮と言いますが、歯肉退縮がおこると、歯の根元が出てきます。

歯の根元の出てきた部分を根面と言いますが、根面は、通常私たちが歯と認識する部分(歯冠部)のエナメル質よりも構造的に弱く、酸に溶けやすいと言われています。

虫歯は酸で歯が溶けることによって起こります。

西宮北口 歯医者 臨界pH食後はお口の中が酸性に傾きますが、エナメル質がpH5.5まで耐えられるのに対して、根面はpH 6.0~6.7程度で溶け始めます。

エナメル質よりも先に根面が溶け始めるのです。

食事により糖質を摂取すると、歯垢(プラーク)の中の細菌が酸を産生してpH4.5程度まで低下すると言われています。

今まで虫歯が無かった人でも、歯ぐきが下がって根面がでてくると虫歯になりやすくなるため、自分は虫歯になりにくいと思っていても虫歯になる可能歯が出てきます。

さらに、根面は、エナメル質のように表面がつるっとしておらず、歯垢がくっつきやすく、取れにくくなっています。

加えて、へこみやくぼみがあり磨きにくい形になっています。

根面のくぼみは、歯と歯の間にあるので、器具も届きにくいため、歯磨きが難しくなります。

奥歯になると根面の形がさらに複雑になり、かなりの歯磨き技術が必要となります。

このように、根面は、磨きにくく、歯垢がたまりやすく、溶けやすいので、虫歯になりやすいのです。

根面う蝕はとっても厄介

西宮北口 歯医者 根面う蝕根面う蝕は進行が早く、もともとが歯髄に近いこともあり、すぐに歯髄に達する虫歯になってしまうことがよくあります。

根面は象牙質が露出しており、象牙質の表面にはたくさんの穴があります。

この穴を通じて虫歯菌が侵入したり酸が入り込んだりするため、エナメル質の虫歯に比べて進行が早くなるのです。

根面う蝕は歯の根元全周に及ぶこともあり、そのため、歯の根元が細くなり歯が折れてしまうこともあります。

歯周病によって歯ぐきが下がってしまった方は、歯磨きの技術が向上しないと、歯周病と虫歯の両方に悩まされることになりますので、より厄介になります。

80歳で20本の歯を残そうという8020運動があり、現在では80歳で20本の歯が残っている方が半数を超えるようになってきました。

歯が残ること自体はとてもいいことなのですが、歯があるということはそれに伴う虫歯、歯周病のリスクもあるということになります。

高齢になり、身体機能が衰え、全身疾患の影響で唾液が少なくなると、虫歯のリスクが上がってしまいます。

せっかく歯は残っているのに、しょっちゅう虫歯になってしまうという方も少なくありません。

根面う蝕(大人虫歯)を防ぐにはどうしたらいいの?

虫歯は様々な要因で起こります。

基本的な予防は通常の虫歯予防と同じく、砂糖(食物)の制限、正しい歯磨き、歯質の強化です。

砂糖(食物)の制限

砂糖のとり方で気を付けて欲しいのは、砂糖量もありますが、その頻度です。

生活習慣で一番気を付けたいのがダラダラと飲食を続けること

飲食の回数が増えると虫歯になりやすくなります。

西宮北口 歯医者 ステファンカーブ在宅勤務で食べる回数が増えてしまった。

退職後、家にいるとついつい食べてしまうなどの生活の変化も要注意です。

まずは、規則正しい食生活を心がけましょう。

間食は一日1回を基本にしてください。

正しい歯磨き

歯磨きは食後すぐに行うといいでしょう。

歯の根元が出てきている場合は、優しい力で磨くようにしましょう。

歯みがきの際の力の入れすぎはオーバーブラッシングといって、歯ぐきを下げる一因になります。

特に、唾液の洗い流す効果が及びにくい奥歯を重点的に磨くといいでしょう。

西宮北口 歯医者 歯間ブラシ日中は忙しく歯磨きに時間をかけることは難しいかもしれませんが、就寝前には丁寧に行いましょう。

デンタルフロス、歯間ブラシなどの補助器具も使って磨くとよいでしょう。

歯と歯の間に出てきた歯の根元は、フロスよりも歯間ブラシで磨く方が効果的です。

歯間ブラシは無理なく軽い力でスッと歯の隙間に入るものが適切なサイズになります。

ご自身の隙間にあったサイズがわからない方は歯科衛生士にご相談ください。

歯質の強化

最後に歯の強化ですが、フッ化物の応用が効果的です。

フッ素配合の歯磨き剤の使用や、フッ素洗口、フッ素塗布です。

フッ素は萌出したばかりの永久歯に対して特に効果的ですので、お子さんに対して使うイメージがありますが、大人の歯の根元、根面にも効果的です。

しかしながら、根面はエナメル質に比べて無機成分が少ないため、エナメル質に比べてフッ化物がたまりにくくなっています。

根面う蝕の予防には高濃度のフッ化物が必要です。

海外と違い、日本では1500ppmを超える歯磨き剤は市販されていませんが、選べる限り高濃度のものを使用するといいでしょう。

また、量もしっかりと長さ1.5cm~2cmほどの歯磨き剤を使い、フッ素を歯の表面にとどめるようにしましょう。

歯磨き剤が多くて磨きにくいときは、はじめに少量を付け、最後に残りの量を付けて最後2分間、歯の根元にフッ素がいきわたるように磨くといいでしょう。

最後のうがいも、気持ち悪くない程度に、できるだけ少量の水で少ない回数にするとフッ素が多く歯にとどまってくれます。

フッ素洗口が有効という報告もあります。

毎日うがいするだけですので、取り入れてみてください。

唾液が少なくなると、唾液からのカルシウム供給も低下するため、フッ化物の再石灰化効果(虫歯になりそうな歯を元に戻してくれる効果)も得にくくなります。

唾液量の低下は加齢のほか、服用薬によっても起こります。

年齢を重ねて、飲む薬が増えてくると、その作用で唾液が減ってくる可能性もあります。

※参照スタッフブログ お口に影響があるお薬

https://www.aobahiro-dc.com/column/2024/3901/

唾液が少なくなって、虫歯になって・・・となる前に、根面が出てきたら歯の強化のため、フッ素化物の利用を始めることをお勧めします。

歯医者さんでの予防処置

歯科医院では、お口の中の状態をチェックして、虫歯が無いかを確認します。

その際に、歯磨きの仕方のアドバイスなどをしています。

そして、自分では落とせない汚れを専門的な機器を使って落とします。

その後虫歯になりにくくなるように、高濃度のフッ素を塗布します。

他に、サホライドという虫歯進行抑制の薬を塗ることもあります。

この薬は酸で溶けだして柔らかくなった歯を硬くするだけでなく、殺菌効果やプラーク付着を防ぐ働きもあります。ただ、このサホライドは、塗った部分が黒くなってしまうので、奥歯や見えない部分に使用することになります。

※参考サイト 日本歯科保存学会 根面う蝕の診療ガイドライン2022

https://www.hozon.or.jp/member/publication/guideline/file/guideline_2022.pdf

 

そもそも歯ぐきが下がってくることが無ければ根面う蝕になることもありません。

歯ぐきを下げないことが大切になります。

当院では、歯科衛生士が患者様の日常のケア方法をアドバイスしております。

ケア方法の心配がありましたら、気軽にご相談ください。