総入れ歯(総義歯)の基礎知識

2026年03月16日

全部の歯が無くなってしまったときに、多くの方が選択するのが「総入れ歯(総義歯)」です。一方で、「噛めない」「痛い」「外れやすい」「何回も通わないといけない」といった話も良く聞きます。

自分の歯と比べると、総入れ歯の噛む力は20%~30%ともいわれていますので、噛めないという評価になるかもしれませんが、適切な総入れ歯であれば、ある程度の食事や会話を楽しむことは可能です。

今回は、総入れ歯の基礎知識から、製作にかかる回数、保険と自費の違い、長く快適に使うためのポイントを簡単にお伝えします。

総入れ歯(総義歯)とは

西宮北口 歯医者 総入れ歯

総入れ歯とは、上顎または下顎、あるいは上下ともに歯が一本も残っていない状態で使用する入れ歯です。部分入れ歯と違い、残っている歯にバネをかけることができないため、歯ぐき(粘膜)に吸着させて安定させます。

吸着させるためには、型取りの精度・噛み合わせの再現をすることが非常に重要になります。

また、義歯の製作においては、技工士との連携も大切になります。

総入れ歯は本当に噛めないの?

総入れ歯で咬めないとおっしゃる方は、合っていない入れ歯を使っていることが多いように感じます。

顎の形や骨の状態、舌や頬の動きは人それぞれ異なり、さらに加齢とともに変化します。変化に応じて入れ歯の調整が必要となります。調整を行っていないと、ズレが起こりやすく、痛みが出やすくなります。また、骨が少ない、骨に隆起があるなど、元々、骨の形態が難しい場合は、痛みが出やすくなります。

適切に作られ、定期的に調整された総入れ歯であれば、硬すぎる食品を除き、日常的な食事に大きな支障が出ることはあまりありません。

総入れ歯の製作にかかる回数と治療の流れ

総入れ歯は、完成までに複数回の通院が必要です。一般的な目安は5〜7回程度ですが、顎の状態や治療内容によって前後します。

 初診・診査診断(1回目)

顎の骨の状態、歯ぐきの厚み、噛み合わせの癖などを確認します。

必要に応じてレントゲン撮影を行います。

概形印象(型取り)(2回目)

既製の型取りトレーを使い、おおまかな顎の形を取ります。

型を元に顎の模型を作ります。

ここで作る模型は、次の精密印象のための準備用の模型となります。

 精密印象(3回目)

個人専用の型取りトレーを作製し、より精密な型取りを行います。

総入れ歯の安定性を左右する重要な治療です。

噛み合わせの記録(4回目)

上下の顎の位置関係や噛む高さを決定します。

ここがずれると、噛みにくさや顎の痛みにつながります。

噛む位置が安定しない場合は、特殊な検査をしながら噛む位置を決めることもあります。

 試適(5回目)

仮の入れ歯を口に入れ、見た目や噛み合わせ、発音を確認します。

必要に応じて修正を行います。何回もかかることがあります。

完成・装着(6回目)

完成した総入れ歯を装着し、痛みや当たりを確認します。

使い始めは柔らかい食べ物から初めて、徐々に負荷のかかる食べ物に移行していきましょう。

 装着後の調整(7回目以降)

使用を始めると痛みや違和感が出でくることがあります。

調整することで、徐々に使えるようになっていきます。

今の入れ歯は痛くて外している、使ってないからという理由で、入れ歯を持ってこない方がいらっしゃいますが、新しい入れ歯を作るにあたり、参考になることがありますので、受診時には持っていく方が望ましいでしょう。


入れ歯はオーダーメイドです。
製作日数、回数がかかります。型をとったらすぐに完成すると思われている方もいらっしゃいますが、すぐにできるものではないのです。
よく、11月下旬に来院されて、年末までに入れ歯が欲しいと言われることがありますが、入れた後の調整まで考えると、間に合いません。間に合わないことを伝えるとがっかりされるのですが、技工士の環境を考えると納期を早めるということも難しいのです。
院内に技工士がいたり、先生自身が義歯を作成したりして、すぐに義歯を作ってくれる医院もありますが、その多くが自由診療での治療となっています。
当院では、院内で義歯を作ることができないため、自由診療であっても日数がかかります。
2025年12月より、3Dプリントを利用した総義歯が保険適応になりました。
技工の工程が効率化され、納期が短くなり、通院回数も減ることから技工士、患者様ともにメリットがあると期待されています。
一方で課題もあります。現段階では、上下ともに総義歯の場合のみと適応が限られていること、使える色調があまりないこと、試適ができないため、見た目を確認して作ることができないことなどです。

総義歯作成時、前歯の感じを変えたい、こういう風にして欲しいといった要望がある場合は、デジタル上の確認だけでは間に合わないことがあります。
特に、唇を閉じた感じが・・・という感覚的なことを確認するのは難しいのです。デジタルで省くことができる工程が、前歯の確認になりますので、デジタルで対応できる方は限られそうです。
今後、更なる技術の向上と臨床データが蓄積していくことで、一般的な選択肢になっていくことが期待されます。

保険の総入れ歯と自費の総入れ歯の違い

保険診療の総入れ歯は、国が定めたルールに基づき作製され、基本的な噛む機能の回復を目的としています。費用を抑えられる点が大きなメリットです。

西宮北口 歯医者 総入れ歯

一方、自費診療の総入れ歯では、薄くて軽い素材、金属床による熱の伝わりやすさ、見た目の自然さなど、快適性や審美性を重視した設計も可能になります。

金属を使用した総入れ歯は薄いため、違和感を感じにくい、壊れにくいということがメリットになります。

デメリットとしては、金属アレルギーのある方には使用できない、自費であるために費用がかかるところです。

総入れ歯を快適に使い続けるためのポイント

長く使うためには丁寧なお手入れが不可欠です。

入れ歯専用ブラシと洗浄剤を使った毎日の清掃を行うことで、清潔な状態で使用することができます。就寝時には外して歯ぐきを休ませましょう。

入れ歯安定剤を使用した際には、しっかりと安定剤を落としましょう。

残っていると安定剤に食べかすが付いたまま、非常に不潔な状態になります。

安定剤は歯ぐきにも付きますので、ガーゼなどで拭うようにして清潔を保ちましょう。

安定剤は、一時的な利用にとどめ、入れ歯が合わない場合は、調整してもらいましょう。

総入れ歯は、作って終わりではありません。顎の骨は時間とともに変化していくため、定期的な調整が必要です。 痛みや違和感を我慢せず、適切に調整することが、長く快適に使うためのコツです

まとめ

総入れ歯は、歯の無い状態を改善し、食べるときの助けになるものです。

また、入れ歯を入れることで、発音しやすくなり、日常生活の質を上げることにもなります。

入れ歯でお悩みがあれば、歯医者さんに相談しましょう。