抜歯後に抗生物質が出ないのはなぜ?その理由とセルフケアのポイント
2025年09月25日

歯を抜いたあと、「抗生物質が出なかったけれど大丈夫なの?」と不安に思う方も少なくありません。実は、抜歯後に必ず抗生物質が処方されるわけではなく、状況によっては出ないこともあります。今回は、その理由と、抜歯後に気をつけたいセルフケアについてお伝えします。
目次
なぜ抗生物質が出ないことがあるの?
かつては歯を抜いたら抗生物質3日間服用が行われていましたが、最近は必要のない場合には処方しない流れが一般的になっています。主な理由は次のとおりです。
耐性菌を防ぐため

不必要な抗生物質の使用は、将来薬が効かなくなる「耐性菌」を増やす原因になります。
世界的に抗菌薬耐性(AMR)が大きな課題となっており、不必要な抗生物質の投与は避けるべきとされています。
感染リスクが低い場合
通常の抜歯では、清潔な環境で処置され、体の免疫力で十分に治癒が進みます。
健常者であれば自然治癒力により、感染のリスクはきわめて低いとされています。
抜歯条件が良好だった場合
膿がなく、処置もスムーズで、全身疾患のリスクもなければ抗生物質は不要と判断されます。
抗生物質が必要になるケース
もちろん、すべてのケースで不要というわけではありません。次のような場合は抗生物質が出されることがあります。
かつてのように3日間ではなく、単回が推奨されています。
・心臓弁膜症、人工弁、先天性心疾患など「心内膜炎(infective endocarditis, IE)」のリスクが高い場合
・下顎の親知らずの抜歯など、難易度の高い抜歯で、粘膜や骨を大きく削った場合
・膿が溜まっていたり、感染が広がっていた場合
・糖尿病など免疫力が低下している場合
※参考サイト 術後感染予防抗菌薬適正 使用のための実践ガイドライン
https://www.chemotherapy.or.jp/uploads/files/guideline/jyutsugo_shiyou_tuiho.pdf
抗生物質がないときのセルフケアのポイント
抜歯後、抗生物質が出なかったときやっぱり不安という方、どんな点に注意すればよいのでしょうか。
1. 口の中を清潔に

当日は軽いうがい程度にして、翌日からやさしく歯磨きを再開します。抜いた部分に直接歯ブラシを当てず、周囲を清潔に保ちましょう。
2. 血餅を守る

抜歯後の傷口は血のかたまり(血餅)が満たしてくれます。
いわばかさぶたのように傷口に蓋をして、感染から守ってくれます。
血餅はゼリー状のため、強いうがいで流れてしまうことがあります。
強いうがいを避けましょう。
3. 食事はやわらかく・刺激控えめに
熱いものや辛いもの、硬いものは避けましょう。
傷に対して刺激になります。
柔らかめで、刺激が少ない食べ物が安心です。
4. 痛みは我慢せず鎮痛剤でコントロール
処方された痛み止めは「痛くなってから」ではなく「痛む前」に飲むと効果的です。
5. 異常があれば早めに受診
2〜3日の腫れは正常範囲ですが、日ごとに腫れや痛みが増す、膿のようなにおいがする、発熱があるときはすぐに歯科医院へ相談しましょう。
まとめ
抜歯後に抗生物質が処方されないのは、「不要だから」と判断されたケースが多く、決して手抜きではありません。大切なのは、術後のセルフケアと異常時の早めの受診です。安心して回復に向かえるよう、抜歯後の生活で気をつけたいポイントをぜひ参考にしてください。